フィラリア症(犬糸状虫症)の予防について

ferret1フィラリア症は蚊が媒介するとても恐ろしい寄生虫の病気です。蚊の吸血とともに体内に子虫が侵入し、最終的に親虫となって心臓に寄生します。犬で有名な病気ですがフェレットにも感染します。
犬では多くは慢性的に経過し心臓病を発症しますが、フェレットでは突然死を起こす場合がほとんどです。

この病気は予防さえしておけば決して罹ることのない病気ですので、必ず予防してあげてください。
予防には基本的に月1回の投薬(駆虫)です。
当院では以下の方法を採用しております。

  • 錠剤:月1回飲ませる薬です。 錠剤といっても小さなものなので、バイトなどを用いると投薬が容易です。
  • スポットオン:月1回 背中に滴下するだけです。ノミやミミダニにも効果がありますので外へお出かけする子や同居に犬や猫がいる場合にはこちらをおすすめします。

フィラリアの予防の注意点

  • フィラリアの予防薬は蚊に刺されないためのお薬ではありません。
  • 1ヶ月の間に体の中に侵入した可能性のあるフィラリアの子虫を、体に害が生じないうちに殺す(駆虫)する目的です。したがって1回飲ませたらその後1ヶ月間予防できるということにはなりません。
  • 地域にもよりますが、およそ4月末(または5月)から11月末(または12月)の間、合計8回の投薬が最も好ましいと思われます。
  • 蚊は窓の開閉の際にお家の中に入ってしまうために、お家の外にまったくでない子でもあっても感染の危険性は十分あります。

※ご不明な点は診察室で獣医師とご相談ください。

 

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ウサギの急性胃拡張

かつてウサギの消化器障害に起因する食欲不振の原因は「毛球症」と呼ばれ、ひとくくりにされていたこともありましたが必ずしも毛球だけが原因とは限りません。

当院では多発するウサギの消化器障害を「急性胃拡張」、「毛球症」、「鼓脹症」、「食滞・うっ滞」などと診断が可能な限り、すべて区別してお話しさせていただいております。
獣医学的な分類はされていませんので獣医師によって名称は異なることがあります。
なかでもこの急性胃拡張は短時間で症状が進行し、生命にかかわる恐ろしい病気であり、当院の統計では子宮ガンと並んで最も死亡率の高い病気のひとつです。生後半年のコでも10歳のコでも、雌雄関係なく突然発症がみられます。この病気こそ早期発見早期治療ができるかによってその後の明暗が分かれます。

症状

  • 突然の食欲不振
    「昨日まで食べていた」にもかかわらず急に食欲がゼロになることが多いです。
  • 突然の排便停止
    小さくいびつな便が少量排泄されることもありますが、便が一つも見られないことがほとんどです。
  • 激しい腹痛
    痛みのために「じっと動かなくなる」「せわしなく姿勢をかえる」「抱っこを嫌がるようになる」「歯ぎしりをする」などの症状がみられます。
  • 症状が進行すると低体温症状や痙攣が起こることもあります。

検査・診断法

急性胃拡張を発症したウサギのレントゲン像 腹部の半分以上を占めるほど重度に拡張した胃(矢印)
急性胃拡張を発症したウサギのレントゲン像
腹部の半分以上を占めるほど重度に拡張した胃(矢印)

問診、触診、レントゲン検査等で総合的に診断します。「いつから発症したか」が非常に大切なポイントなので、できる限り把握ができると迅速に治療を進めることができます。

治療

体液組成の調節のための輸液と鎮痛剤を用いた痛みのコントロールが必要です。常備薬として使われることの多い、消化管を動かす薬は状況によっては逆効果のこともあるため慎重にならなければいけません。

予防

ウサギの消化管は非常にデリケートであり、ストレスが強くかかったり低繊維の食餌によってあっという間に異常な発酵を起こし、機能不全に陥ります。良質な牧草を与えるというのは不正咬合の予防以外にも健康な消化機能を保つのに必要なことなのです。

 

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ウサギのエンセファリトゾーン症

usagi4Encephalitozoon cuniculiという病原体がウサギに感染して様々な症状が引き起こされる恐ろしい病気です(略して「Ez症」などと呼ばれています)。驚くべきことに近年の国内における調査ではエンセファリトゾーンの感染率は全国のウサギの約60%にも及んでいるとの報告があります(注)。特筆すべきはこのデータには無症状のウサギも含まれていることであり、今まで何も病気の兆候がなかった元気なウサギが、突然発症する可能性があるということを示唆しています。

症状

症状は主に➀神経症状➁眼症状➂腎不全の3つに大別されます。
特に警戒しなければならない神経症状として最も代表的なのが斜頸です。重度になると姿勢保持ができなくなり、ローリングと呼ばれる運動失調が発症します。こうなるとほとんどのケースで食欲不振が生じますのでウサギが重篤な状態になることがあります。

※現在、様々な情報が錯綜していますが「斜頸=エンセファリトゾーン症」ではありません

診断

現在のところ、生前の確定診断は不可能といわれています。実際には血液検査やレントゲン検査、神経学的検査やエンセファリトゾーン抗体検査などを組み合わせて診断を進めていきます。

治療

治療にはエンセファリトゾーンの病原体を抑制する薬を用います。また、二次的な食欲不振や二次感染等の治療も徹底して実施しなければなりません。

予防

多頭飼育において病原体の蔓延が知られているため、ウサギ同士の接触や同居飼育には注意が必要です。飼育ケージや食器等の環境の消毒も重要です。

注:ここでの感染率とはE.cuniculiのIgG抗体の陽性率を表します。

 

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フェレットの副腎疾患

副腎は身体の左右に1つずつあり、アドレナリンに代表されるいろいろなホルモンを分泌する器官です。フェレットではこの副腎が腫瘍化してしまうなどの副腎疾患があらゆる年齢(早いコでは2歳くらいから)でみられ、様々な症状を引き起こします。

症状

●尾~腰背部から脱毛がはじまり、その後全身に広がることもあります。
ferret02●雌では陰部や乳腺が腫れる。
●攻撃的になったり体臭がきつくなる。
●進行すると貧血排尿不全による尿毒症など生命を脅かす症状が発現します

検査・診断方法

副腎が腫大していないか 大きさを計測することができます
副腎が腫大していないか
大きさを計測することができます

触診や血液検査、レントゲン検査などを駆使し、総合的に診断します。特に超音波検査はフェレットに負担がなく確実性も高い検査法です。

治療

フェレットの副腎疾患の治療は大きく分けて「外科治療」と「内科治療」の2つの方法があります。

■外科治療

異常な副腎を摘出することにより根治が可能な方法です。特に腫大した副腎が癌だった場合は癌を体内から取り除けるので非常に効果的です。全身麻酔を施しての手術になるため併発疾患や高齢の個体では困難なことがあります。

■内科治療

副腎から過剰に分泌されるホルモンを抑制する薬剤を1~数か月ごとに接種します。約95%のコに改善の効果が現れ、一回の治療費用は外科手術と比較しておさえることができます。しかし、継続治療が必要であり再発率はやや高いといわれています。

副腎疾患の治療はフェレットの状態や年齢、病気の進行度等に合わせた治療法を選択しなくてはなりません。この疾患の治療は長期にわたってしまうことも多いため、当院では飼い主様のお気持ち・ご意向を尊重し、最適な治療法をご提示したいと考えております。どうぞ診察室でお気軽にご相談ください。

 

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メガバクテリア症(AGY症、マクロラブダス症)

鳥類の感染症の一種であり、その病原体は以前はMega(大きな)Bacteria(細菌)と呼ばれ、治療法が確立されてなく致死率の高い疾病でしたが、その正体は細菌ではなく真菌である特殊な酵母菌の感染によるものと報告されました。現在では治療法が確立しつつありますが、病気の発見の遅れと病態の進行の速さにより重篤になるケースも多く、恐ろしい疾病であることにはかわりがありません。 多くの鳥種に感染をすることが知られていますが重篤になりやすいのはセキセイインコ、オカメインコの幼鳥、マメルリハインコ、キンカチョウ、カナリアです。

症状

  • 削痩  「Going Light」(どんどん痩せていく)と呼ばれ筋肉が委縮してしまいます。
  • 食欲不振  嘔吐・下痢・黒色便などの消化器症状が見られます。重症例では吐血を起こすことがあります。
  • 膨羽、沈うつなど  元気がなく、動かなくなります。
  • 無症状のこともありますが免疫低下により急性発症し、生命にかかわることがあります。

※元気で食欲があったとしても必ず治療をしなければいけません

検査・診断

「メガバクテリア」の菌体(矢印)  大きさや厚さに様々なタイプが存在します
「メガバクテリア」の菌体(矢印)
大きさや厚さに様々なタイプが存在します

糞便検査によってメガバクテリアを検出します。検出率は100%ではないので繰り返し検査を受けるのが効果的です。

治療

メガバクテリアを排除するための投薬(※抗生物質は無効です)と消化器症状に対しての支持療法を徹底する必要があります。
幼鳥期のメガバクテリア症は早期発見によって多くが治癒しますが、大人になってから発症した場合、後遺症が残ってしまうこともあります。 早期発見・早期治療が非常に重要です!

 

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うさぎの避妊手術について

うさぎは子宮疾患の発生頻度がとても高い動物です。うさぎは小型の草食動物であり、肉食動物に捕食される立場にあるため、子孫を残す必要性から優れた繁殖力を備えています。女の子の繁殖は主に卵巣から分泌される雌性ホルモン(卵胞ホルモンと黄体ホルモン)に司られています。ところが、妊娠する機会がほとんどない家庭のうさぎの場合はホルモンバランスが崩れ、発情状態が続きます。この不自然なホルモンバランスは子宮や乳腺にさまざまな悪影響を及ぼし、寿命を左右するばかりでなく(4歳以上の未避妊のウサギは80%以上が子宮がんに罹っていると報告されています)、雌ウサギはイライラした状態が続くので、ご家族とコミュニケーションをとる上での大きな障害となります。

避妊手術は雌雄が一緒に生活している場合の繁殖の制限を目的に行われる他、雌うさぎに多い子宮、卵巣、乳腺の病気を予防するためにも行われます。また、ホルモンストレスが少なくなるために攻撃性がなくなり、とても穏やかになることがあります。

手術は全身麻酔下で、卵巣と子宮を摘出します。避妊手術をするとエネルギー要求量が減るため、術後の回復期が過ぎた頃から肥満防止のために食事量を減らす必要があります。個体差があるので一概には言えませんが、手術前の8割程度の量に押さえ、適切な体重を保つようにしましょう。

当院では術後の早期回復を考慮し、うさぎにストレスを与えないために以下の医療処置は基本的に行っておりません。

●術後の入院(日帰りです)

●抜糸(生体内で徐々に吸収される糸で結び目が埋没される縫合法を用います)

●投薬(滅菌下での手術になりますので抗生物質は不要です)

●手術創の消毒

●エリザベスカラー(傷をかじらないように首につけるわっか)の装着

麻酔から覚めたら、ごく普通の生活が可能です。

避妊手術は電話での御予約も受け付けておりますが、それぞれの子に適した手術スケジュールをご提案させていただきたいと考えております。事前に獣医師(執刀医)と診察室での相談を推奨いたします。

 

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