ウサギのツメダニ症

ウサギのツメダニ症は頻繁に遭遇するウサギの皮膚疾患のひとつです。

症状

主に背中~腰にかけて脱毛やフケが多く見られます。痒みはそれほど顕著でないことが多いです。

図1-2背部
ウサギの背中に見られた大量のフケ

 

診断

被毛の検査を実施してダニの虫体や卵を検出します。

図3ツメダニ卵
ツメダニの卵
図2ツメダニ
ウサギツメダニ

治療

一般的にダニ駆除剤が用いられますが安全性が確立していないものもある為に必ず獣医師の処方が必要です。完全駆虫には反復投与が重要です。

予防

他のウサギからうつるのが一般的ですが、長期の単独飼育個体に発症することもまれでなく、不顕性感染が示唆されています。

外出することがあるウサギは予防的に薬を投与しておくことも重要です。

 

 

 

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ウサギの急性胃拡張

かつてウサギの消化器障害に起因する食欲不振の原因は「毛球症」と呼ばれ、ひとくくりにされていたこともありましたが必ずしも毛球だけが原因とは限りません。

当院では多発するウサギの消化器障害を「急性胃拡張」、「毛球症」、「鼓脹症」、「食滞・うっ滞」などと診断が可能な限り、すべて区別してお話しさせていただいております。
獣医学的な分類はされていませんので獣医師によって名称は異なることがあります。
なかでもこの急性胃拡張は短時間で症状が進行し、生命にかかわる恐ろしい病気であり、当院の統計では子宮ガンと並んで最も死亡率の高い病気のひとつです。生後半年のコでも10歳のコでも、雌雄関係なく突然発症がみられます。この病気こそ早期発見早期治療ができるかによってその後の明暗が分かれます。

症状

  • 突然の食欲不振
    「昨日まで食べていた」にもかかわらず急に食欲がゼロになることが多いです。
  • 突然の排便停止
    小さくいびつな便が少量排泄されることもありますが、便が一つも見られないことがほとんどです。
  • 激しい腹痛
    痛みのために「じっと動かなくなる」「せわしなく姿勢をかえる」「抱っこを嫌がるようになる」「歯ぎしりをする」などの症状がみられます。
  • 症状が進行すると低体温症状や痙攣が起こることもあります。

検査・診断法

急性胃拡張を発症したウサギのレントゲン像 腹部の半分以上を占めるほど重度に拡張した胃(矢印)
急性胃拡張を発症したウサギのレントゲン像
腹部の半分以上を占めるほど重度に拡張した胃(矢印)

問診、触診、レントゲン検査等で総合的に診断します。「いつから発症したか」が非常に大切なポイントなので、できる限り把握ができると迅速に治療を進めることができます。

治療

体液組成の調節のための輸液と鎮痛剤を用いた痛みのコントロールが必要です。常備薬として使われることの多い、消化管を動かす薬は状況によっては逆効果のこともあるため慎重にならなければいけません。

予防

ウサギの消化管は非常にデリケートであり、ストレスが強くかかったり低繊維の食餌によってあっという間に異常な発酵を起こし、機能不全に陥ります。良質な牧草を与えるというのは不正咬合の予防以外にも健康な消化機能を保つのに必要なことなのです。

 

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ウサギのエンセファリトゾーン症

usagi4Encephalitozoon cuniculiという病原体がウサギに感染して様々な症状が引き起こされる恐ろしい病気です(略して「Ez症」などと呼ばれています)。驚くべきことに近年の国内における調査ではエンセファリトゾーンの感染率は全国のウサギの約60%にも及んでいるとの報告があります(注)。特筆すべきはこのデータには無症状のウサギも含まれていることであり、今まで何も病気の兆候がなかった元気なウサギが、突然発症する可能性があるということを示唆しています。

症状

症状は主に➀神経症状➁眼症状➂腎不全の3つに大別されます。
特に警戒しなければならない神経症状として最も代表的なのが斜頸です。重度になると姿勢保持ができなくなり、ローリングと呼ばれる運動失調が発症します。こうなるとほとんどのケースで食欲不振が生じますのでウサギが重篤な状態になることがあります。

※現在、様々な情報が錯綜していますが「斜頸=エンセファリトゾーン症」ではありません

診断

現在のところ、生前の確定診断は不可能といわれています。実際には血液検査やレントゲン検査、神経学的検査やエンセファリトゾーン抗体検査などを組み合わせて診断を進めていきます。

治療

治療にはエンセファリトゾーンの病原体を抑制する薬を用います。また、二次的な食欲不振や二次感染等の治療も徹底して実施しなければなりません。

予防

多頭飼育において病原体の蔓延が知られているため、ウサギ同士の接触や同居飼育には注意が必要です。飼育ケージや食器等の環境の消毒も重要です。

注:ここでの感染率とはE.cuniculiのIgG抗体の陽性率を表します。

 

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うさぎの避妊手術について

うさぎは子宮疾患の発生頻度がとても高い動物です。うさぎは小型の草食動物であり、肉食動物に捕食される立場にあるため、子孫を残す必要性から優れた繁殖力を備えています。女の子の繁殖は主に卵巣から分泌される雌性ホルモン(卵胞ホルモンと黄体ホルモン)に司られています。ところが、妊娠する機会がほとんどない家庭のうさぎの場合はホルモンバランスが崩れ、発情状態が続きます。この不自然なホルモンバランスは子宮や乳腺にさまざまな悪影響を及ぼし、寿命を左右するばかりでなく(4歳以上の未避妊のウサギは80%以上が子宮がんに罹っていると報告されています)、雌ウサギはイライラした状態が続くので、ご家族とコミュニケーションをとる上での大きな障害となります。

避妊手術は雌雄が一緒に生活している場合の繁殖の制限を目的に行われる他、雌うさぎに多い子宮、卵巣、乳腺の病気を予防するためにも行われます。また、ホルモンストレスが少なくなるために攻撃性がなくなり、とても穏やかになることがあります。

手術は全身麻酔下で、卵巣と子宮を摘出します。避妊手術をするとエネルギー要求量が減るため、術後の回復期が過ぎた頃から肥満防止のために食事量を減らす必要があります。個体差があるので一概には言えませんが、手術前の8割程度の量に押さえ、適切な体重を保つようにしましょう。

当院では術後の早期回復を考慮し、うさぎにストレスを与えないために以下の医療処置は基本的に行っておりません。

●術後の入院(日帰りです)

●抜糸(生体内で徐々に吸収される糸で結び目が埋没される縫合法を用います)

●投薬(滅菌下での手術になりますので抗生物質は不要です)

●手術創の消毒

●エリザベスカラー(傷をかじらないように首につけるわっか)の装着

麻酔から覚めたら、ごく普通の生活が可能です。

避妊手術は電話での御予約も受け付けておりますが、それぞれの子に適した手術スケジュールをご提案させていただきたいと考えております。事前に獣医師(執刀医)と診察室での相談を推奨いたします。

 

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